Japanese
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特集 慢性進行性神経疾患・1
中毒
有機燐中毒
Organophosphorus intoxication
宇尾野 公義
1,2
Masanori UONO
1,2
1都立府中病院
2東京大学医学部(神経内科)
1Department of Neurology, Tokyo Metropolitan Hospital of Fuchuu
pp.892-901
発行日 1972年10月10日
Published Date 1972/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903440
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1.まえがき
有機燐剤が農薬として本邦で使用され始めたのは昭和25年頃からであり,さらに27,28年頃には多くの有機燐誘導体が登場して広く農業界を風靡したが,当然ながらこれによる急性ないし亜急性中毒が各地に発生し,とくに米どころで爆発的患者の発生をみた。農林省では上田喜一班長を中心とする「新農薬の人畜にたいする影響に関する研究」と題する研究班を組織し基礎および臨床面の綜合研究が熱心に行なわれた。すなわち有機燐剤の毒性,早期診断,治療法,予防法などを重点に数年にわたる研究成果が報告された5,19,21,24)。
その後とくに毒性の強いparathion,methyl parathionTEPPなどは昭和44年末をもって登録廃止となったが,なお,その害虫に対する卓効性から有機燐剤の魅力があり,それにもましてすでに15年間に散布された残留量が最近きわめて問題視されているのである。つまり低毒性と称する改良された有機燐すらも長い間には体内貯留により慢性中毒を来たす可能性が出て来た。これが有機燐眼症の一因として再認識され,あるいはSMON病のchinoform+α説の一つとして検討されているのである。
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