実態をさぐる
老人問題
pp.60-61
発行日 1971年4月10日
Published Date 1971/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204907
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数日前のある新聞に,老人性白内障と神経痛で苦しんでいた1人暮らしの老婆が,周囲の人々の暖かい援助によって入院し,安らかな毎日を過ごしているという記事がのっていた。また,数年前から,老人敬愛の精神の啓蒙を目的として,敬老の日が国民の祝日として設けられた。だが,その日には,毎年数人の老人達が老人福祉の改善・充実を叫びつつ,自らの命を断っているという事実も忘れることはできない。先の新聞記事にしても,戦前にはほとんど起こりえないことであったと思われる。
現在の日本は福祉国家とは名ばかりで,社会福祉に対する行政ペースは,経済成長のペースに追いつかず,生産性の低い社会的弱者――老人をはじめ児童や身障者などは,繁栄から取り残された階層として存在していると言える。
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