特集 住民に学ぶ
住民レポート
富士川町の闘いの中から
芦川 照江
1
1富士川町いのちと生活を守る会
pp.10-14,24
発行日 1970年10月10日
Published Date 1970/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204766
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住民運動のおこり
私達住民は,今まで選挙という形以外に,政治に参加する方法があろうなどとは考えてもみなかった。大昔の歴史をふり返ってみれば,自分達のくらしをやってゆくための知恵は皆で出し合って考えていたものだったのに,いつのまにか形式が完備されてゆくにつれて,それは魂をおき忘れたものになってしまっていた。しかし,いつの時代でもそうした形を破り,すべての機構を蘇生させてゆくものは,やはり,やむにやまれぬ人間としての叫びであろう。人間回復の住民運動が欝勃とした情熱であちこちに噴き出してきているのも,現代の政治がいかに侵されたまま末期症状を呈しているかの現われなのである。
住民運動は無論,恒久的な体制というようなものではない。それはおのずから私達人間の心の奥から湧き出した自己回復の強い衝動なのだ。体制の中で,特に行政の機構の中で,人びとが自分の職業にやりきれなさを感じている時,その体制の外側の住民はすでに涸渇してしまっている。しかしどうかするとたのしい窓口もあって,そこには,始終住民が出入りしてうるおっている流域がある。
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