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「勉強」L'ETUDE
pp.64
発行日 1968年10月10日
Published Date 1968/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204299
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18世紀の絵画には,子供を描いた秀作が多い。このフラゴナールの作品「勉強」は,茶褐色を基調とし,正面切って描写されていて,同じフラゴナールの「本をよむ少女」とならんで優劣のつけがたい少女像である。フラゴナールの制作の早さは有名で,この作品中にも衣裳の部分に,それが発揮されている。
フラゴナールは18世紀の生んだ,まさに時代の子であり,燭熟した文化の申し子であった。陽気で気まぐれで,――情感にみちた作品,色彩と光の陶酔にあふれた作品,淡い抒情をみせた作品,悪ふざけに似た大胆さのある作品――と,どれがほんとうのフラゴナールか,と問いたくなるほどに,彼は,その感覚のおもむくままに風俗を描きまくったのである。フラゴナールの前には政治も宗教も道徳もない,あるのは洗練された芸術だけである。それ故,彼の晩年は,フランス革命のうずの中で悲惨であった。
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