古典紹介
—Gilles de la Tourette—Etude d'une affection nerveuse caractérisée par de l'incoordination motorice accompagnée d'écholalie et de coprolalie—第1回
保崎 秀夫
1
,
藤村 尚宏
1
Hideo Hosaki
1
,
Naohiro Fujimura
1
1慶応義塾大学医学部精神神経科
1Dept. of Neuropsychiatry, Keio University School of Medicine
pp.1019-1028
発行日 1978年9月15日
Published Date 1978/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202824
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Bouteilleは80歳時に,それまでの長年にわたる実地での深い経験を基に,「舞踏病概論」を著わしているが,その「序文」原註3)で次のように述べている:《この疾患では,あらゆることが異様である。即ち,その名称はおかしなものだし,症状は奇異だし,特徴は多義にわたり,原因も不明で治療も問題である。偉大な学者達は,その存在を疑ってきたし,ある者は見せかけであると考えたし,それはまた,超自然的なものだと批判した人々もいた》と。彼が,広く賞賛されたその著書を出版した頃は,このような非協調性運動が優位な症状を占める神経疾患は,未だ,それ以外のものと区別されていたわけではなく,その大部分が確かに「舞踏病」の表題のもとに一括されていた。より適切に言うならば,「舞踏病」という表題では,この疾患の本質をほとんど判断できないということである。
しかし,1818年以来,大きな進歩がなされ,舞踏病は,その神経疾病論に完全に助けられて,日日その病的領域は,狭められてきた。そしてこのフランスの老学者が,いみじくも予測して,次のように述べている:《私は,「仮性舞踏病」ないし,「偽舞踏病」原註4)という名称を用いる。これは,痙性,けいれん性,ヒステリー性などの神経疾患の中で,真正舞踏病の特徴的な症状をもたないことで区別されるし,「身体の異なった部分の不随意的な動きと顔面のしかめ顔様のけいれんによって,真性舞踏病と類似していない」》と。このような,Bouteilleの研究を受けついで,この昔の定義を十分に理解しようとすれば,確かに舞踏病群から切り離して,今日では最早舞踏病ではないことをより完全に示すことができるだろう。
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