古典紹介
Albert Pitres—Etude sur l'Aphasie chez les Polyglottes (Revue de medicine. 15:873-899, 1895)—第1回
渡辺 俊三
1
,
佐藤 時治郎
1
,
一之瀬 正興
2
Shunzo Watanabe
1
,
Tokijiro Sato
1
,
Masaoki Ichinose
2
1弘前大学医学部神経精神科
2弘前大学教養部
1Service de Neuropsychiatrie, Faculté de Médecine, Université de Hirosaki
2Faculté de l'Enseignement general, Université de Hirosaki
pp.967-975
発行日 1980年9月15日
Published Date 1980/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203150
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はじめに
多国語を知っている者が失語症になった場合,かつては使い慣れたすべての言葉を同程度に失ない,回復に向うに従いすべての言葉を使用する能力が同時に回復するように思われていた。多くの症例は確かに以上のような経過をたどるが,常にそうであるとはいえない。時として,博言家訳注1)は病前に所有していたことばの一部のみの失語症となることがある。あるいは失語症発症時にすべてのことばを失った後に,まず初めに,あることばを除いた他のことばの使用能力が少しずつ回復し,次いで,残りのすべてのことばあるいはその一部のみの回復がみられることもある。
なぜこのような違いが生ずるのであろうか?それはいかなる法則によるものであろうか? その違いを生じさせるメカニズムはいかなるものか? この論文の中で以上のことを追究してみたい。
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