特集 脳をめぐる今日の医学
未熟児の脳障害
奥山 和夫
1
1国立小児病院新生児未熟児科
pp.29-32
発行日 1967年12月10日
Published Date 1967/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204073
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はじめに
脳性小児まひが,未熟児におこりやすいことは,すでに100年前にLittleによって指摘されたが,その後の多くの研究は,脳性小児まひ患者の30〜70%は未熟児として生まれたと報告している。いっぽう,最近は,未熟児の長期にわたる追跡研究が行なわれており,未熟児のうちでも出生時体重が2,000g以上のものは,脳性小児まひや知能障害の発現率が成熟児と大差ないにかかわらず,2,000g以下のものには高率に発生し,とくに出生時体重が小さいものほど発現しやすいという報告が多い。さらにまた,出生時体重の小さい未熟児は,成熟児と比べて知能指数が低く,行動異常を示すものも多いという報告もみられる。
脳性小児まひが未熟児に多発するといっても,その原因を単に未熟児だけに帰することには問題がある。未熟児は頭蓋内出血,無酸素性脳障害,核黄疸,低血糖症感染などに罹患しやすく,脳の奇形を伴なって生まれることも多い。少なからぬ未熟児がこれらの病気で死亡するだけでなく,脳性小児まひや知能障害のほとんどはその後遺症と考えられる。妊娠,分娩の適切な管理と,未熟児の正しい養護によって,これらの疾患を予防することは,脳性小児まひを減少させるのにきわめて重要なことと思われる。以下,未熟児におこりやすい脳疾患について略述してみたい。
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