特集 脳をめぐる今日の医学
精神障害研究の新しい方法—行動異常をめぐって
菱山 珠夫
1
1群馬県厩橋病院
pp.17-23
発行日 1967年12月10日
Published Date 1967/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204071
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はじめに
当初編集部から私に与えられた題名は「行動異常と脳のメカニズム」ということでありました。どうもこの題名は,精神科医である私に与える題としても,また地域精神医療の実践の場にある保健婦さんが読まれる小論の題としても,あまり適切ではないように思われます。というのは,私どもが対象としている行動異常とは,決して現在の医学のレベルにおいて,すぐさま脳のメカニズムと直接結びつけられるほど単純ではないことを知っているからです。(以下話の順序として,その理由などについて少し述べてみますが面倒臭いと感じられた方は,ここをとばして実験の紹介から読んで下さい。
現在までの大脳機能に関する神経生理学,神経化学などの研究は,動物(人間も含めて)の運動系や知覚系,さらには意識,情動といった機能にまで,その基礎にある脳のメカニズムとの関連性を解明する道筋のあることを示してきています。たしかに,まとまった行為ができなくなる先行症とか,意識障害(朦ろう状態など)や,知能障害(痴呆など)を背景として現われてくる行動異常,さらにはてんかんの不気嫌症時の行動異常など,ごく限られた行動異常については,ある程度までそれに関与する脳のメカニズムは解明されつつあります。
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