書評
世界の精神保健―精神障害,行動障害への新しい理解
鈴木 幹夫
1
1財団法人神経研究所附属晴和病院
pp.921
発行日 2005年8月15日
Published Date 2005/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100095
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本書は,世界保健機構(WHO)によるThe World Health Report 2001:Mental health:New understanding, new hopeの訳である。監訳者によるあとがきによると,WHOは,新規事業計画の一つとしてThe World Health Reportを1995年に創刊し,毎年5月の世界保健総会時に刊行しているが,2001年には,あまりにも長く無視されてきた精神保健の問題を取り上げ,本書が生まれた。
内容を概観すると,まず精神保健と精神障害,行動障害を理解することの重要さを説いた後に,精神障害が個人と社会にいかに負担を強いるかについて,包括的な(あるいは世界的な)疾病負担(GBD;Global burden of disease)に言及している。あらゆる年齢の障害調整生存年数(DALYs;早死損失年数+障害共存年数)の全体の12%を精神障害が占め,その主要原因の4位に単極性抑うつ障害がランクされている。2020年にはそれが15%になり,うつ病は虚血性心疾患に次いで2位になるとされる。さらには障害共存年数(YLDs)の主要原因の上位20位に,うつ病,アルコール乱用,統合失調症,双極性障害,アルツハイマーおよび他の認知症,偏頭痛と6つの精神障害が入っている。いかに精神障害対策が重要であるかの証拠であるが,その研究,治療,リハビリテーション支援への財政支出は,わが国をはじめ世界的にもあまりにもお寒いと言わざるを得ない。
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