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展望
精神医学の立場からみた霊長類の行動異常の研究
Studies on Behaviour Disorders in Nonhuman Primates : Considerations in Psychiatric Aspects
臺 弘
1
Hiroshi Utena
1
1東京大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.660-672
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201772
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I.はじめに
精神医学の立場から霊長類の研究の意義を積極的に認めている精神科医は,現在においては決して多くはない。むしろ誠に少ないというべきであろう。それは一つには,精神医学に深く流れている精神至上主義ないしは非生物主義ともいえる傾向と——これが粗雑な言い方であることは私も承知しているが——,二つには,従来の身体病に対して行なわれてきた実験医学的な分析方法が生物学的研究方法のすべてだと思われていて,それが精神障害の研究や治療に十分な成果を上げるに至っていないという事情に関係している。
私は精神医学と精神科医療の現在の主流が,精神障害を患者から離れた病気としてではなく,一人の人間のあり方として理解し,患者に対して社会的・心理的な関与をすることに,大きな意味をおいていることを十分に認めているが,それが反生物学的傾向をとるならば,すでに一種の反動現象であって,早晩また行きづまるだろうということを深く感じているものである。
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