特集 脳をめぐる今日の医学
脳のはたらき
時実 利彦
1
1東大医学部
pp.10-16
発行日 1967年12月10日
Published Date 1967/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204070
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1.大きいばかりが脳ではない
図1は,頭の骨のなかからとりだした人問の脳の左側面である。大脳と小脳とにわけることができるが,人間の脳では,小脳は全体の10分の1くらいである。大脳は左右の半球状の大脳半球がくっついていて,その間に棒状の脳幹という部分がはさまっている。脳幹は上から順に,間脳,中脳,橋,延髄に区分されているが,外からみえるのは橋と延髄であって,延髄の下には脊髄がつづいている。
私たち日本人の脳の重さは,男で1,400グラム,女で1,250グラムである。ネズミの脳は2グラム,ネコの脳は30グラム,サルの脳は80グラム,ゴリラの脳は500グラムであるから,人間の脳はかなり重いことになる。しかし,9,200グラムのマッコウクジラの脳にはかなわない。昔の偉人傑物の脳は,普通の人の脳よりも重かったということで,脳は重いほど知能がよいのではないかといわれている。もしそうであるなら,女は男より1割がた頭がわるいことになるが決してそうではないし,また,マッコウクジラが人間の数倍の知能をもっているわけではない。結局,大きいにこしたことはないが,大きいばかりがノウではない。
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