連載 発達医学・2
出生前小児科学 その1
平山 宗宏
1
,
三宅 久子
1
1東大医学部保健学科母子保健学
pp.52-56
発行日 1967年10月10日
Published Date 1967/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204044
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1.発達に影響をおよぼす出生前の要因――出生前小児科学
前回,発達医学の意義や小児期の分類についてのべたが,ここでは出生前に原因があって以後の発達・成長に影響をおよぼす事項について記したい。小児の生命は母体内において,卵が受精したときからはじまる。受精卵(接合子ともいう)が発達医学の出発点というわけである。遺伝子あるいは染色体のことを考えるならば,当然受精以前の問題といえるであろうが,新しい生命は受精卵からはじまるとして,一応ここを起点にしよう。
受精卵が卵割をくりかえして細胞の数を増し,さらに分化して体を形づくっていく経緯は発生学の教科書に詳しいが,その途上で何らかの原因がはたらいて,奇型その他の異常をおこすことも稀ならず存在する。すなわち先天異常として,われわれ母子保健にたずさわるものが重大な関心をはらわなくてはならぬ症例である。このような,出生前に原因がある疾患を研究する学問が出生前小児科学Prenatal pediatricsとよばれている。近年予防および治療医学の進歩によって,重症感染症が減少したため,このような出生前に原因のある小児疾患が非常に目立つようになってきた。東大小児科の統計によれば,最近5年間の入院患児総数4,332人のうち,1,135人,26.2%,すなわち約3分の1が出生前小児科学の患者であったという。
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