講座
出生前小児科学と母子総合管理
坂元 正一
1
,
堀口 貞夫
1
1東京大学医学部産科婦人科教室
pp.33-35
発行日 1965年2月1日
Published Date 1965/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202915
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Ⅰ.出生前小児科学の背景
Fanconiは,その著書の中で出生前小児科学Pränatale Pädiatricsという言葉をあげ,小児疾患の原因として遺伝因子の異常とともに胎生期における諸種の刺激,たとえば妊娠中のビールス性疾患への感染,ビタミン欠乏,放射線曝射,さらに精神的影響,アルコール摂取や喫煙,種々の薬剤使用等の影響を重視し,この期間の児の健康管理はむしろ出生前小児科学とも言うべき概念をもとに取扱うべきことを指摘し,小児科医は妊娠中からこの問題に関与しなければならないと提唱した.事実かれ自身の研究は染色体,遺伝因子にまでさかのぼっている.
その背景は,第1には,やはりこの言葉の提唱者である高津教授の言葉を借りれば,学問の進歩によって遺伝因子,染色体異常と小児疾患があざやかに結びついたことによるであろう.糖原病,ウイルソン氏病,ガラクトーゼ血症,Galactose-6-phosphate dehydrogenase欠乏症,血友病等は単一遺伝子性酸素異常症(monogenic inzymo pathies)の概念下に入るし,常染色体異常としてモンゴリズムが,性染色体異常としてKlinefelter症候群,Turner症候群が明らかになってきているのである.出生前,むしろ妊娠前の問題に立入らざるを得ないのは研究上当然のなりゆきであろう.
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