特集 保健婦現代史―そのあゆみとゆくて
第Ⅰ部 公衆衛生行政の流れと保健婦
衛生行政の流れと保健所の歩み
栗原 忠夫
1
1神奈川県衛生部
pp.20-23
発行日 1967年1月10日
Published Date 1967/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203816
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I.衛生行政と社会の相関
日本の衛生行政の近代化の歩みは明治初年に始まるが,もはやその頃には欧米においては細菌学が開花し,防疫もたくまずして正道を歩める時代になっていた。したがって日本の衛生行政は欧米のように永い暗黒の悩みを経ずして,封建時代の終りとともに近世政治の体系下に入ると比較的容易に,かつ速やかに近代化の道を歩いて来たのである。
しかし衛生行政初期の段階としては当然防疫と環境衛生施設整備に行政の主点が置かれるのはやむをえないことである。日本もそのような段階を経てきた。このような段階では民衆の衛生知識の低さと相まって,官権的取締が傾向として強くなるのは行政効果を速やかに期待すれば必然なことである。しかしここに目本の衛生行政がながらくのあいだ取締を主とした警察行政のなかに沈潜してしまった遠因があったことを知っておかなければならない。
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