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ある保健婦の回想
今 沙留人
pp.65-67
発行日 1966年9月10日
Published Date 1966/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203744
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つまらないことですが,ちかごろ保健婦がBG保健婦だとか,官僚保健婦だとかいわれるように,何かしら機械的な働きになってきたような気がします。たしかにいろいろな分業ができ,制度や施設もととのってきたのですから,保健婦が何でもかでもするという時代はすぎさったことは判ります。けれども,それといっしよに患者の扱いが,その場限りになってしまったり,忙しさにとりまぎれて何となく患者のことに夢中になれないというのは,どんなものでしようかしら。今更こんなことをお話しするのは,何か時代錯誤な感じがないでもないのですが,まあ聞いて下さい。
わたしの前に住んでいた町にゆくと,まだ親しそうによって来てくれる,何人かの患者がいます。いや,患者というのは正しくはありませんね。今は元気に,立派に働いている方ばかりなのですから。もう二十何年も前につとめていた保健所の時の患者ですから,古い話です。今日の話の主役はこのなかのひとりなのですがいまだに四季のあいさつに来てくれます。
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