特集 食事療法と保健指導
食事療法とその指導
松木 駿
1
1慶応大学医学部食養研究所
pp.12-14
発行日 1966年9月10日
Published Date 1966/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203731
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食事療法の重要性
大昔は病気の治療には安静療法しかなかった。今日でも安静療法の重要さは決して軽視してはならないが,少量の薬の服用で劇的効果を示すことのある薬物療法が登場して,患者や家族の人気をすっかりさらってしまった。なるほど最近の抗生物質など薬物療法のめざましい進歩によって,ある種の病気の治療が容易になったことは人類の大きな福音といわなければならない。昔でも病気の時何を食べさせようかということは大いに悩んだことであろうし,ある程度経験的な言い伝えもあったであろうが,病気の時の食事法が食事療法として科学的に裏づけられたのはそう古いことではない。したがって食事療法の研究はまだまだ進めなければならない問題が少なくないといえよう。
人間が生きるために必要な食事は1日もゆるがせにしてはならないわけであるから,すべての病気の治療に食事療法が大切であるといえるが,急性の病気や薬物療法がよく効く病気では,一時的な栄養不足もそれほど心配しなくてよい場合も多い。しかし慢性の病気では栄養を上手に保つことが病気の治療に必要であるし,そうすることにより薬物療法の効果がよくなることもある。また薬物療法が全く無効で食事療法以外に治療のない病気もあるから,そのような病気では食事療法の重要性は著しい。
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