特集 精神分裂病の保健指導
精神分裂病者に対する作業療法
井上 正吾
1
1三重県立高茶屋病院
pp.35-41
発行日 1966年3月10日
Published Date 1966/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203601
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はじめに
精神障害とはどのような状態をいうのであろうか.精神的能力を簡単に知・情・意およびその統合体である人格として考えるのが便利である.
今(1)これらの機能が一般の人より著しくかけ離れたりかたよりすぎている場合,しかもそのために社会生活に不便を感じたり他の社会人が迷惑をこうむるようなことがある.もちろんこのかたよりの原因はいろいろ考えられ,教科書的にいえば外因,心因,内因などと分類される.このような時に私たちはその人を精神障害者といっている.それから,その精神障害者の知・情・意または人格のかたよりが著しい場合はもちろんであるが,(2)その適応すべき社会のあり方とも関係する.たとえば南山大学の荻野教授がニューギニアの高地人を調査された時のことばによると,「ニューギニア人には精神分裂病はなかった.海岸地方に住む人びとの間では,西欧文明と接触するにつれて精神分裂病が発生してきた.しかし高地ニューギニア人には西欧文明との接触が少ないし,現在まだ分裂病は発生していない.また私は最近中華人民共和国の医療事情を視察したが,完全なる社会主義体制下においては精神分裂病者の発生をくい止めるし,また発生しても社会復帰を容易にするように思えた.」
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