最近の動向シリーズ
予防医学の最近の動向
岡田 博
1
1名古屋大学医学部予防医学教室
pp.57-62
発行日 1965年8月10日
Published Date 1965/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203452
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
「予防医学の最近の動向」という,まことに広汎な問題について紹介するように要求されたけれども,最近各方面にそうとう進歩をきたしている予防医学の全般について,ご紹介することは,この短文では不可能なので,疫学を専攻している筆者の,しかも興味をもっている方面での最近の様子をご紹介するにすぎないことを,まずおことわりしておく.
最近の医学はひじょうに進歩したとよくいわれる.しかしその場合医学とは治療医学を考えていっている人が多い.たしかに治療医学は進歩した.近年の物理学化学の進歩に伴なって,病気への観察は個体のレベルから臓器のレベルさらに進んで組織のレベルから分子レベルにまで到達しているし,画期的な薬剤であるズルファミン,抗生物質,さては副腎皮質ホルモンなどの出現は過去に治癒困難ないく多の疾患を快癒させるようになったし,また麻酔法や冷却手術法などの発達は,過去には想像もできなかった外科的疾患の治療を成功させるようになった.
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.