保健婦のあゆみ
つねに恵まれぬ人の友として—藤間アサヨさんの歴史(1)
土曜会歴史部会
pp.44-47
発行日 1965年8月10日
Published Date 1965/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203446
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まえがき
土曜会歴史部会は昨年の5月例会で,大正12年関東大震災当時,保健婦として訪問活動をされたという藤間アサヨさんの話を直接聞くことができた.晩年の最後の職場であった早稲田診療所の田辺所長の紹介によるものである.
初対面の藤間さんは,総白髪の80歳のお年寄りで,腰は曲らず,質素なまっ黒いワンピースに大がらの身を包んで,その風雪に耐えたしなびた中指には,裁縫用の指貫きがはめられたままであった.耳も若い者なみ,応答にも格別のまごつきもなく,生来の体質のよさを思わせるものがあったが,話してゆくうちに,社会生活から遠ざかった今でも,家庭的には楽隠居という身分でもない様子で,部屋借りのひとり住いで,毎日緊張した生活らしく,そのハリがこのような若さを保たせているものかと考えさせられた.
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