プログレス
循環器疾患の予防管理における最近の動向
伊藤 良雄
1
1(社)東京都教職員互助会 三楽病院
pp.315
発行日 1983年5月15日
Published Date 1983/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102852
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急速に高齢化社会を迎えつつある日本の三大死因は癌,脳卒中,心臓病であり,後2者の死亡は全死亡の約4割に及んでいる.脳卒中は減少の一途をたどり死因1位の汚名を癌にゆずったとはいえ,まだ日本は世界屈指の脳卒中国である.そして近年脳卒中の中では脳出血が減り脳梗塞が増え,その比は昔と比較し逆転している.一方心筋梗塞で代表される虚血性心臓病は一時危惧された程増加せず死因統計上は減少の兆をみせているものの,日常臨床では減少という実感から程遠く決して手放しで喜べる状態でない.生甲斐ある健やかな長寿国にするためには癌と並んでこれら循環器疾患の予防・管理が我々医学・医療に携わるものの使命といえよう.
さて脳卒中や虚血性心臓病は,感染症のような起炎微生物という単一原因による疾患でなく,遺伝的素質を始めとする多くの因子の積み重ねで発症する多因子的疾患であるとされている.また心筋梗塞や脳梗塞の基盤となる動脈硬化は加齢現象と表裏一体をなし,その進展は加齢と共にある程度避けられないが,それを促進する因子も数多く知られている.
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