特集 現代社会と精神衛生
職場における精神衛生管理
梅沢 勉
1
1警視庁健康管理室
pp.16-19
発行日 1964年10月10日
Published Date 1964/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203219
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2つの実例より
5年勤めれば職長,10年で係長,15年で課長といった人事昇進制度.つまり年功序列を人材評価の最も強力な目安とする制度が多くの会社でとられていますが,近ごろは本人の業務実績に応じて年功にかまわず幹部にすえることが試みられるようになってきました.A君は39歳,努力勤勉型の男で,昨年の4月に係長に昇進しました.ところが6カ月後にはアルコール中毒者となり強制入院治療ということになってしまいました.係長に昇任したとき,A君の直接の上役に当たる課長代理は,彼よりずっと年若で思いどおりにバリバリ仕事をするタイプの人でした.4月という月は新入社員が各課に配置される時期で,A君もその教育指導の役をつとめねばなりませんでした.A君の課に長くいる人たちは,長い勤務の歴史のなかで1つの雰囲気を作っており,その雰囲気はバリバリ型の仕事ぶりとは相容れないものでした.
A君はそうした雰囲気をさとり,また新入社員の人たちから,新しい制度のもとで教育された若者の考えかた,生活態度などが,A君自身といかにかけ離れているものかを痛感しました.そこで,そうした人たちとできるかぎり話し合う機会を作り,自分も自分なりの考えを述べて,ほかから批判をしてもらい,長い伝統はなるべく残し,若者の良さは十分とり入れ,そして自分も向上してゆこう,そうしてゆくことが仕事の能率をあげる基本であると考え,積極的にそうした努力をつづけました.
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