特集 現代社会と精神衛生
現代社会と精神の健康
佐藤 壱三
1
1銚子市立病院神経科
pp.11-14
発行日 1964年10月10日
Published Date 1964/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203218
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病んでいる社会
今年,昭和39年の夏も,事多い季節のようであった.
月面の写真を送ったロケット,レインジャー7号を発射したアメリカ合衆国で,まだ白人と黒人が血なまぐさいあらそいをおこしていたり,わが国でも,新潟で,かつての関東大震災にも近いような大きな地震があって,石油工場がもえ,高層の鉄筋コンクリートのアパートが横倒しになり,最近でき上がったばかりの橋が,まっ二つにおれてしまった.かと思うとそのすぐ隣の明治時代にできた橋が,そのまま残っているという.それにつづいて,鳥取地方は大雨で,土砂くずれなどがおこり,死者がなん人も出る.ちょうどそのころから,この10月には,世界じゅうの人が4年に1度集まってオリンピックをやろうというその東京で,水飢饉がはじまり,水源池の底は乾上がって亀裂を生じ,ビルディングの立ならぶその街中では,手洗いの水にも困るという始末.ついには自衛隊まで出動のニュースがある.これは給水部隊でまあよかったが,これが狭い国の中で同時におこったことであった.
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