コンタクトレンズ(49)
学ぶことと教えること
長谷川 泉
pp.68
発行日 1964年4月10日
Published Date 1964/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203092
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最近編集会議に来社したさる病院長が慨嘆していました.これは「暮しの手帖」の記事に関連してのことであったのですが,それを離れても現代日本の狂った世相のあらわれとして反省させられます.東京の小学生2万人の調査で,驚いたことには4人に1人の割合で,朝ごはんをたべて来ない子供がいるというわけです.そんな家庭は,暮しに困って朝食がたべられないのではないのです.夜ふかしママさんが,子供の学校へ行く頃,朝まで寝ているので,朝ごはんをたべない子供ができるわけです.もちろん,子供に朝ごはんをたべさせないくらいですから,だんなさんも朝飯をたべないで会社へ出てゆくというわけなのです.老院長先生は,人つくりの委員もしている方ですから,天を仰いで長嘆息して言いました.「私たちの常識ではとても考えられないことです。こんなんで,将来の日本はどうなってゆくんでしょう」と.
何かが狂っています.夜ふかしママさんは,自由な解放された生活をエンジョイしているかもしれませんが,そのエゴはわが子を愛する気持の深まりにはつながってゆかないようです.戦後ももう20年近くなろうというのですから,国敗れてのちの精神の荒廃が教育とか,しつけとかの荒廃をもたらし,何かが狂った歪んだ日本を生み出したのでしょう.
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