私のいだく保健婦像
地域社会全体の組織者
渡辺 春江
1
1群馬県利根郡新治村
pp.41-43
発行日 1964年2月10日
Published Date 1964/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203040
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
遠くに谷川連峰がくっきりと見える.昨日の夕立で道がひじょうに悪い.途中までバイクに乗り,道端にバイクをとめて,そこから開墾部落への山道を,訪問カバンを背負って約30分登らなければならない.途中だれにもあわず,見晴らしはひじょうによく,山の空気は格別である.汗びっしょりになって目的の家につく.庭で着物の前を土とよだれで真黒によごして遊んでいる子供に「かあちゃんいる」と声をかけると,ぞろぞろ近所の子どもたちも寄り集まってきた.
「こんにちは,役場の保健婦ですが赤ちゃんを見に来ました.」「はあ,よーこんな遠いところまで登って下すった.たいへんだむし.」と子どもをかかえた母親があいさつした.中学3年を頭に女6人男1人の子だくさん,7人のうちだれ1人として助産婦に介助してもらった子どもはいない.4女は1ヵ月以上も出生届をしなかったという.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.