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なぜ多病家庭訪問をしたか—群馬県佐波郡東村での活動の中から
西本 多美江
1
1群馬県佐波郡東村役場
pp.22-29
発行日 1963年12月10日
Published Date 1963/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202990
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ほんとにいいご時勢になったよ
「ほんとにいいご時勢になったよ.わしらのようなもんにお上が千円も毎月くれるんだからね.長生きのほうびだとよ.昔は10銭の金がいるからって近所じゅうまわったって借りられなかったもんだに.貸すんがやで貸してくんねえんじゃあねえよ.わしらの連れになるもんは10銭のゼニが持っていられなかったんだよ.旦那のところへお頼み申しに行ったら庭先きで待ってろってさ,いつまで庭に座っていても座敷で碁を打っていて,ことばもかけてもらえなかったっけ.わしゃとうとうすすりあげて泣いちまったよ.せつなかったよほんとに.その大尽様がいまあ,ああやってこちとらとおんなじに田んぼへ出るんだものさ.たいへんな娑婆になったがね.」
昨年死んだおじいさんへ,若いもんにいやな顔をされずに大好きな酒を飲ませとおしたのも年金のおかげと,中山のおばあさんはニコニコと話します.
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