特集 患者の情緒的要求と看護
重症結核患者のカウンセリング
深津 要
1
1国立八事療養所
pp.31-35
発行日 1961年6月10日
Published Date 1961/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202344
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1.まず実例を
むずかしい理論をひねくりまわす前に,ある重症の結核患者が,受持看護婦に対して感じたことを聞いてみよう.
「私たち病人は,心身ともに苦しんでいることを,看護にあたられる方々はよく承知しておられると思いますが,なかには患者の訴える身体の苦痛を,そんなことは誰にでもあることですよ,貴女だけではないのよ,と一笑にしてしまわれたり,あるいはまた冷たい目なざしで,甘えているのね,そんなの何よ,がまんしなさいと,まるで叱られているように感ずることがあります.病人はよほどでなければ体の苦痛は訴えないものです.それを主治医に取り次ぎもしてくれず,看護婦だけの意見できつくがまんせよとおさえられたときには,病人の苦痛が健康な看護婦にわかるか,といい返したいくらい悲しく思つた."目は口ほどにものを言う"ということがいわれますが,看護にあたられる方々の目を,言葉を,態度をみていれば,誠意をもつて看護して下さるか,お役目ごくろうで看護してやるという気持ちでしているかはよくわかるものです.」
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