映画時評
これからの映画界
外輪 哲也
pp.56
発行日 1960年5月10日
Published Date 1960/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202095
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昨年から今年にかけて「岩戸景気」の風が吹きまくり,「ゴールデン・エージ」と騒がれて,「消費ブーム」をあおりにあおつていますが,このことは広告マスコミが活溌になつて,テレビ攻勢がいよいよ激しくなることを意味していますから,この好景気は映画界にとつては,岩戸の開かない暗黒の世界に等しいと言えそうです.映画界の前にたちはだかる壁は,ますます厚く,高くなつて来たようです.
今年も,この不況の打開策として,テレビ対策だの,テレビとの共存説だと乱れ飛ぶことでしようが,行きつく所は「質」と「量」の問題,つまり.「大作主義」か「多量主義」かの問題になりそうです.昨年,大映の「大作主義」が,ウタイ文句だけに終り,またこれまで量産主義で押して,絶対的に興行成績で他を圧倒していた東映も,結局数に追いまくられて,企画がマンネリズムに堕入り,観客が食傷気味になつたのか頭打ちになつて,先が見えて来たし,2本立,3本立の大安売りは,映画産業の零細化に拍車をかける弊害も暴露しています.この対策として,東映ではフィルム代を節約するために,電波で映像を送る方法も研究されているようですが,なんといつても,これからの日本映画界の最大の課題は,海の向うのハリウッドに出現して,衰退しかけた勢力をバン回させ,観客動員数を増加させている新しいエース「70ミリ方式」と,いかに取組むかということでしよう.
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