映画紹介
惜春鳥(松竹作品)/男性飼育法(東京映画作品)
外輪 哲也
pp.52-53
発行日 1959年6月1日
Published Date 1959/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201703
- 有料閲覧
- 文献概要
脚本監督・木下恵介,撮影・楠田浩之,音楽・木下忠司といつた顔ぶれの木下組が取り組む作品で,厳しい現実を前にした友情と愛と青春への惜別を浮彫りにしようというもの.所は白虎隊で名高い会津——苦学に希望を失なつて帰省し,友情を裏切つて愛人とかけ落ちするために窃盗をはたらく岩垣(川津祐介),その岩垣をかばつてやろうとする旅館の息子卓也(小坂一也),自分が妾の子であるため,愛し合つている蓉子(十朱幸代・新人)をあきらめるアルサロの息子康生(津川雅彦),その蓉子の養子になる工場で働く手代木(石浜朗),その手代木を友情の裏切りだと怒り,決闘を挑む会津塗りの下職をやつているビツコの馬杉(山本豊三),胸をおかされ生活にも人生にも疲れ果てた英太郎(佐田啓二)と心中する芸者みどり(有馬稲子),残雪の会津を背景にくり展げられるこれら青春模様は哀しいと言えば哀しいし,美しいと言えば美しい.「野菊の如き君なりき」「風花」系統に属する作品で,一沫の感傷を混えた抒情的な作品になるだろう.そして,前記両作の信州の風物のように,この作品でも残雪会津が詩情豊かにとらえられることと思う.色彩ワイド.
Copyright © 1959, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.