ルポルタージュ
はしけの人々によせて
所沢 綾子
1
1編集部
pp.49-52
発行日 1959年9月10日
Published Date 1959/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201945
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世界第一の美女のレツテルである,ミス・ユニバースは,今年は日本代表児島明子さんの手によつて獲得された.しかしこの事実はあらかじめきめられていたことで,その裏にはマツクス・フアクター化粧品会社の日本市場獲得の,たくましい商魂がかくされていたとか.今年は「アキコ」という商品名のマツクス・フアクターの口紅が児島明子さんの百万弗のほほえみと共に日本を風靡するのではないかという噂が巷に流れている.大きな資本の動くところ,あらゆる宣伝戦と結びついてくる.これが我々の生きている資本主義社会の実情であろう.とは知つていても,やがて売り出される「アキコ」は多くの美しくなりたい美女達のひそかな願いによつて流行する可能性を持つている.
ある新聞の報ずるところによれば,今年の痴情関係による殺人件数は戦後最高であつて,戦前の実践に到達したという.これは食生活,物質生活が安定した証拠であるという.妙なところで戦前の生活レベルに達したことが証明されたものであるが,物質生活が安定しなければ情痴というようないわゆるゼイタクな現象は生れて来ないものだそうだ.たしかに我々の物質生活は向上したように思われる.10年前は夏の暑さをどうやつてしのいでいたのだろう.ルーム・クーラーの快適さを知つた今は,すでに扇風器の涼風などでは満足出来なくなつている.扇風器1つ購えない身分とは無関係に,あらゆる広告が,我々の目にとまつて,欲求不満をおこさせてくれる.
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