口絵
はしけの人々をまもつて—水上生活舘の仂き
pp.2-8
発行日 1959年9月10日
Published Date 1959/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201931
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あの絢爛たるしかけ花火で有名な隅田川,夜ともなれば川岸に並ぶ料亭の灯,はなやかなネオンを映して流れる隅田川.大東京の真只中を流れる隅田川の,河口から東京港にかけて,来る日も来る日も水の上を漂いながら船を仕事場とし住宅として暮している人々がいる,その水上生活者の数は約3,700人と云われてる.電気,水道,ガス等あらゆる文明の恩恵からはなれて,過酷な労働条件のもとに働いているそれらの人々の健康をまもるために,真黒に日やけして船から船を廻つて「予防注射だよう!」「検診だよう」と叫びかけている人がいる.竹内剛先生と本山ハナさん,それから水上生活館長の五味勢川先生である.
水上生活館は東京都中央区小田原町の隅田川にそそぐ河口にのぞんで,ごく最近改築された美しい姿でたつている.生活館の本来の目的としては地域組織活動にあるが,仕事の都合であちこちの船だまりに船をとめて休む居住地不定の人々であるだけに非常にむずかしい.生活館の「みんせい号」で船だまりを廻つて「はしけ」の健康を守るのが大きな仕事である.「おかもの」といつて彼等は陸地に住む人々を敬遠して寄せつけないというが.気長に熱心に近づいていく先生や保健婦に今では親しげな笑いをうかべ,身の上相談もするようになつて,ようよう検診者の数も増して来た.
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