ルポルタージュ
精薄者にしあわせを—女性を指導する鎌倉市紅梅学園をたずねて
編集部
pp.33-36
発行日 1959年2月10日
Published Date 1959/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201811
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鎌倉駅からバスで十分,大塔宮前で下車して100メートルばかり歩いたところに,女性ばかり20名の精神薄弱者を収容した紅梅学園がある.園長は菅寿子(49)さん.“文芸春秋”の編集長をしていた菅虎雄氏の未亡人で,菅氏の父は夏目漱石が熊本の五高で教鞭をとつていた時代に,漱石の住居として離れを貸していた関係で,その後も漱石と親交のあつた人である.
古びた門に「菅」という標札がぽつんとかかつている.600坪ばかりの広い庭に2階建と平屋のこれも古びた木造家屋が2棟建つている.ここは菅さんの私邸で,このうち平屋の棟が精薄女性のために解放しているわけである.解放したのは29年の春,末弟に精薄者を持つ菅さんが,長年の間,末弟に対する父母の教育や指導を目のあたり見た結果,「結局精薄者を普通の人間と同じように引き上げ,その仲間入りさせようと思うのは無理で,同じ程度の者と一緒に生活するのが本人にとつては一番幸福」という信念と,精薄者のためにはこうもしてやりたい,ああもしてやりたいという気持から出発したもの.自分が女性でもあり,女のことならよくわかるからというので女性だけを対象にし,庭に梅の木が多いところから,名附けて“紅梅学園”としたという.
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