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夢よもう一度
長谷川 泉
1
1医学書院編集部
pp.10
発行日 1959年2月10日
Published Date 1959/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201803
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皆さん方はフランスのジユール・ベルヌという人の書いた「月世界旅行」という科学物語のお話をお聞きになつたことがあると思います.日本にも月については「竹取物語」に「かぐや姫」の物語があります.「かぐや姫」は最後に月世界へ飛び立つて行くことになります.中国にも月の中に宮殿がある物語があります.また月の表面の影に兎を連想するのは各国共通であり,このように人間の夢は地球を離れて,月の世界と結びつく考え方が昔から東西共にあつたことがわかります.
地球も月も太陽系の中の1つの存在でありますが,今年の正月はソ連の「人工惑星」第1号の打上げによつて,ジヤーナリズムは大いにかきたてられ,そのことを強く意識させられました.ソ連の「人工惑星」第1号は,日本時間でいうと1月3日に打げられ,月に衝突あるいは着陸することなしに,月の傍をかすめて更に遠くまで飛んで行つてしまいました.このソ連の打上げたロケツトは今までの試みであつた「人工衛星」から更に1歩を進めて「人工惑星」になつたわけです.「人工惑星」の段階から更に1歩を進めると,将来は太陽と対等の存在である「人工恒星」になることも考えられます.おそらく今後の研究と実験が進むことによつて,太陽系の引力圏を越えて,更に銀河系宇宙の中心を廻り出すようになることも考えられます.
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