読者からの手紙
若いお友達へ
川谷 靖子
1
1埼玉県春日部市役所
pp.9
発行日 1959年2月10日
Published Date 1959/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201802
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1日のつとめを果してそれぞれに家路をたどる電車の中のはなしです,車窓に明減するあかりを眺めながら,あれこれと,今日の1日を思い起している私に,「今の若い人達はだらしがないね」とT保健所長がぽつりとおつしやるのです.わたくしは内心ギクリとしました.「今の若い保健婦さんはすぐに職場を出て行つてしまうから困りますよ」と言葉が続きます.わたくしの頭の中には,新しい職場についたばかりで,次々と職場を去つてしまつた4〜5人の若い人達の顔が浮んで来るのでした.そんなわたくしに「あなたは大丈夫逃げ出さないで下さいね」と所長は念を押すようにおしやるのでした.これは過日私の部落で行われた家族計画研修会の帰りのことでした.その後1カ月ばかりして,またT所長にあいました.「実習生の方達,もう就職の方は決まりましたか」と問うわたくしに「若い人達は困りますよ,仕事がきれいで,楽で,お金のとれるところがいいというのですから」とまたまた「若い人達は困りますよ」というおしかりの言葉である.いつたいT所長をして「若い人達は--」と嘆かせるものは何であろうか,またそれはT所長だけの言葉であろうかと考えざるを得ませんでした.
私達の仲間が集れば,「町村は大変だ」「やりたいことも出来ない」と口々にいいます.また過日行われた県の保健婦講習会の折にも,盛んに仕事が出来ないという訴えがありました.
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