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転落女性の問題とその周辺(2)—婦人更生寮寮医の立場から
奈良林 祥
1
1婦人保護施設いずみ寮健康管理室
pp.49-52
発行日 1958年11月10日
Published Date 1958/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201761
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規則が無いということ
寮長と医者の私と5人の女子職員,計7名のスタツフで歩みはじめるに当つて,いずみ寮には,起床や就寝や食事の時間等生活の規準になること以外,一切規則を作らないことにしました.厚生寮に入る娘さん達の大半は,つい最近まで,昼頃ねぼけまなごで起き出して夜働き,面白くなければすぐふてくされるような,大変ふしだらな生活をしていた人達です.そういう娘さん達を50名もまとめて扱うのに,一切規則をもうけないというのは大変無謀なことのように見えるかも知れませんが,私どもは,そういう人達だからこそ,規則をはずして生活させるべきだと判断したのです.
規則という奴は,あればそれを破つてみたくなるし,拘束されれば無性に自由がほしくもなります.(卒業試験などなければ,或いは学生はもつと勉強するかも知れません)それに,転落女性にほぼ共通に見られる自主性の欠除,自分の意志で暮しを整えようとする意慾が足りないという面を正常に戻させるためにも,規則のない環境で,自分で自分を律することを覚えさせたかつたという意味もあります.
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