映画
<巨人と玩具>—大映作品
外輪 哲也
1
1ぐるーぷ・まさぐらん
pp.38-39
発行日 1958年6月1日
Published Date 1958/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201490
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芥川賞作家・開高健の「巨人と玩具」の同名映画化.原作が諷刺に富んだものだけに,この映画のテンポも喜劇調に進められ,その中に鋭い現代社会への批判,さらには現代人への批判をも含有している.脚色を白坂依志夫がやり,「くちずけ」「氷壁」などの増田保造が演出に当つている.増田監督は「戦後派」ともくされ,日活の中平康監督らと共に次代の映画を背負つて立つ一人に数えられている.今迄の作品は「青空娘」「暖流」などのように,どちらかと言えば抒情的なものだつたが,この種の作品(巨人と玩具)にもつとも技量を発揮するものと期待されている.
現代は「マスコミ時代」と言われている.新聞・ラジオ・テレビ・映画・週刊紙・広告宣伝・街頭放送……即ち,活字・ビラ・音・絵と視聴覚に訴えかけて人間をひきずりまわしている怪物,これを「巨人」という名のもとに表現している.そして,その中でせせこましく生きる人間を「玩具」で象徴し,その代表者としてマスコミの渦の中で押し流されている「スター」をあげている.一見,華やかに見えるスター,実はこのスターは苦しくてもチーズ(笑顔),嬉しくてもチーズの人形で,営業用の顔をふりまわしているが,いつのまにかのつぺらぼうのスターの顔だけになり,本来の自分の顔を喪失してしまう.そのスターを作りあげるのが宣伝マンだ.無名の一少女がいちやく天下に名を轟かせるスターになれる,と言つたら皆さんは驚くだろうか.事実は小説より奇なのである.
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