社会の窓
動乱のフランス
阿部 幸男
1
1読売新聞社婦人部
pp.55-56
発行日 1958年7月10日
Published Date 1958/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201688
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アルジエリア問題で火のついたフランスの騒乱は"フランス不共和制の危機"として世界の焦点となつている.5月13日,フリムラン内閣の信任投票直前,アルジエリア駐留軍がマツシユ・パラシユート部隊司令官の下に現地クーデターを決行し公安委公共治安委員会の下に公然と反政府運動を開始したのがその火の手であつた.公安委とは現地の軍と民間の連絡機関であると称しているが,内務,外務.経済など七分科を持つ強力なもので,事実上は本国政府に対抗する強力な現地政府が樹立されたことになるこの公安委はアルジエリア諸都市に設立された上,続いてフランス本国内のコルシカ島にまで生れるに及んで事は重大化した.そしてドゴールの片腕と云われたステール元アルジエリア総督(旧ドゴール派)ら右翼議員が本国を脱出してアルジエリアに入り,反乱勢力はいよいよ気勢をあげ,同委員会ではかつての独裁的指導者ドゴール将軍の出馬を叫び,ドゴールもこれに応ずる用意ありと声明した.
ドゴール政府の出現は,すなわちフアツショ化の道を開くものとして,中道派の諸政党から共産党に至るまで一致して反対したが,反乱勢力の増大は無視出来ず,現内閣は事態の収拾をドゴール将軍の手にゆだねる公算が大きくなつた.これに反対して共産党はストライキを指令し,社会党に呼びかけて人民戦線を結成し,ドゴール将軍と対決する動きを見せている.
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