映画紹介
『私は二歳』(大映)
pp.45
発行日 1962年12月1日
Published Date 1962/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202458
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2歳の坊やの眺めた世界
2歳の坊やが主人公の風変わりな映画.2歳の坊やが主演するのは,世界でもはじめての試みである.監督にあたるのは,常に意表をついた演出で人びとをアッと驚かせる市川崑.原作は小児科医の松田道雄の同名ベストセラー.
「生きるということが価値あろうとなかろうと,生きるために人間は全力をつくしています,生きるということは死ぬということよりも,うんとむつかしいし,うんと楽しいはずです」とはシナリオを書いた和田夏十(市川崑の夫人)のことば.一組みの夫婦が,2歳の坊やをめぐって,親子の立場,夫婦の情愛,嫁としゅうととのトラブル,それに加えて,坊やの自家中毒,ハシカ,ゼンソク(小児の神経症)などさまざまな問題にテンテコ舞いする.坊やの目をとおして,夫婦のいさかいや,父と母の育児のちがい,祖母の盲目な愛情が,皮肉なユーモアで綴られる.また坊やの幻想場面は,横山隆一のアニメーション(動画)で,たとえば,窓からみえた三日月がバナナに早がわりするなど,趣向がこらされている.
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