映画紹介
一粒の麦—<大映作品>
外輪 哲也
pp.33
発行日 1958年9月1日
Published Date 1958/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201532
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「一粒の麦」とは「一粒の麦・地におちて死なずば多くの実を結ぶべし」という聖書ヨハネ伝の一節を意味するものである.この作品ではそれを踏れて育つ麦のような少年少女に例えている.大都会に放り出されて,社会の荒波と斗い,小さな瞳に涙をいつぱいためて働く少年少女達その大都会に蒔かれた一粒の麦が成長して行く姿を描き,暖く見守る若い教師の愛情を描く「集団就職」を主題にした異色作である.
福島県を臨時編成の集団就職列車が東京へ向つて出発しようとしている.この中には平田中学の井上先生が,離郷の不安と緊張に硬張つた表情をしている卒業生11名を引卒している.梅夫はそば屋"一茶庵"香代は大沼病院,強は須山自動車工場,実,次男,権三の三人は鉄工所四郎と誠はガラス工場,夕子,明子かつは浜松郊外の織物工場へと就職して行く.が,実は井上先生は,就職運動ばかりに走り廻つて勉強する暇がない教員生活で,果して真の教育者かどうかの疑惑を持つている.しかも,同じ先生の沼田イチ子と結婚出来ないのも忙しさのせいである
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