忘れられぬ文章
—古賀泰子歌集—「溝河の四季」
中野 良子
1
1大阪市立厚生女学院
pp.51-56
発行日 1958年2月10日
Published Date 1958/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201582
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楽しい思い出,夢を語り合つた女学校を卒業して十幾年振りに,パツタリ合つた友と今は男子卒業生もまじえた同窓会に,何のてらいもなく,ためらいもなく,出席してお互に教育の場にある者としてのなやみを話し合い,友人間の噂に話しがはずんだのだつた.この時に同級生である古賀泰子さんの教師としての生活を歌つたのが歌集として出版されている事を紹介された.しかし彼女を思い出せなかった.私には久しく手にさえもつた事のない歌集を得て一夜むさぼり読んだ.始めは十分もすれば読めなくなる事を覚悟していたのが140頁すつかり味うことが出来,古賀さんを思いどこの通学区であつたか,しかも教師への道を選ぶべく課外授業も共に受けたことまで思い出した.世に目立たぬ仕事をして生きてゆくことがどんなに大きな心の闘いを必要とするか,又それがどのように尊いことであるか云うまでもない.
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