特集 上手な話し方
保健婦と話術
金子 光
1
1厚生省医務局前看護課
pp.11-13
発行日 1957年5月10日
Published Date 1957/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201396
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かつて,保健婦は,"説教保健婦"だの"講和保健婦"だのという異名をもらつたことがあります.それは戦時中のことで,数の少い保健婦が非常に多くの担当区域をもたされてゆつくりと腰をおちつけて話し合う時間的余裕をもたなかつた頃,一方的な指導だけで,次から次へとかけまわつていたころの悪夢です.併しそれも単に時間の不足や多忙をのみ理由にするのはいささか後めたい気持もしますので,やはりそれは,保健婦に最も必要な技術である"話術"の上手でなかつたためでもありましようというのが,適切かも知れません.
保健婦の仕事は,これを一口にいえば,"話し合いの世界"に生きる仕事なので,話し合いが出来れば――仕事は成功するし,話し合いがつかなければ--結果は,よくならない.成功する時はそれ丈明るい生活をおくることが出来る人が増えることになり又,増えることの出来るような仕事の成立する証拠でありますが,うまくいかない時は,その直接の対象となる家族や,仕事のためだけでなく,その人の住む,或いはその仕事のある村や町自体の全体のマイナスになつていくわけです.
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