特集 本誌発刊15周年記念
病院関係諸法規の制定当時の事情
保健婦助産婦看護婦法
金子 光
1,2
1東京大学衛生看護学科
2当時:厚生省
pp.65-69
発行日 1964年6月1日
Published Date 1964/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202368
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保健婦助産婦看護婦法制定の事情を書くように依頼をうけ,改めてふりかえってみれば,それは昭和22年7月,当時はまだ戦時中につくられた医療関係者に対する規定を含めた「国民医療法」が現存していたために,制度は独立した法律とすることができず,国民医療法に基づく委任命令の形で制定された「保健婦助産婦看護婦令」として政令によって規定されたのですが,(政令は国民医療法の解体に伴い,翌年の昭和23年7月30日法第203号による保健婦助産婦看護婦法として独立した)それがつくられるための準備は,終戦直後の20年の秋からはじまるのですから,ざっと20年前のこととなるわけです。昨年,法の制定15周年の記念会が厚生省によってもたれたのですが,事実はそれ以前すでに動き出していたのです。
儒教,家庭制度,封建社会等の中ではぐくまれたわが国の男尊女卑の思想は戦後いわゆる民主主義による個人の尊重,男女平等,機会均等などの思想にきりかえられたとはいっても,それは方向がそう向けられたということで,社会の通念や各人の考えが一度に変わったわけではむろんありません。看護の仕事が女子の職業であるということは,不平等思想からぬけきれず,男子である医師の隷属的存在であった縦の関係の看護を,医師の協力者として横の関係において育成することの困難さは,少数の理解ある医師や自覚した看護婦だけの力ではどうにもならない。社会そのものが認識するようにならなくては解決しないことです。
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