新しい年を迎えて 新年にあたつて
保健婦事業を考えましよう
金子 光
1
1厚生省
pp.13-14
発行日 1960年1月10日
Published Date 1960/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202000
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国民皆保険,その内容は国民医療皆保険ですが,その実現を目標にして,保健婦事業を考えてみましよう.
保健婦事業がわが国に行われはじめて30年以上になるでしようか,関東大震災の直後からが組織的事業の始まりということからいえば35年位になるわけです.当時から現在に至るまでの間には,長い戦争時代,そしてみじめな敗戦と占領時代,その後の平和条約と日本の独立,そして復古調と,世の中の動きは激しく変化も著しいものがありました.これに伴つて発足したばかりの保健婦事業も大海の小舟の如く揺り動かされ,波のおもむくままに流されて今日に来ているといえましよう.もともとアメリカから輸入の品ですから,戦後アメリカによる占領行政時代には「陽の当る場所」になつたはずで,戦時中にゆがめられたあり方を,あるべき姿にもどすための努力は可成り強力になされて,極端とまでみえる位に徹底してよりをもどして来たのでした.それが,いつの頃からでしようか,少しずつ方向がずれていくようになつたというと語弊があるかもしれませんが,少し考え方のニュアンスが違つて来て,今日では,保健婦の業の最も大切な原則的な事業であるケースワーク(Case work)というものが段々横によせられているようにみえます.
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