講座
受胎調節活動に於ける保健婦と助産婦の立場
立松 宗一
1
1八尾保健所
pp.38-40
発行日 1956年1月10日
Published Date 1956/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201096
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
終戦後10年間に於ける我が国の人口自然増加は目覚ましいもので,戦前の1億に達するのはここ10年を出ないだろうと思われる程である.毎日々々1,000名を乗せた移民船が我が国の港を出発しているとしても年間365,000名の海外移民より出来ないのである.然るに現実に於ては如何であろうか.僅に年間1,000名に満たない移民を南米其他に送つて居るに過ぎない状態である.故に人口問題としての移民は現在の状態に於ては問題外として考えなければならない.そこで政府が出産制限に目先を換えたのは宜なるかなと云い得るのである.産児制限の中でも人工妊娠中絶は云う迄もなく母体に与える影響が大きく推奨すべき事でない事は誰も異議は無かろう.それで次に出て来るのは受胎調節の問題である.
受胎調節は戦後多くの人に依つて其の必要性を強調せられて来たが,さて其の実施については我が国の習慣風俗及び家屋形式が困難な様に出来ている.殊に使用す可き器具や薬剤の購入と云う事になると,過去の日本の道徳教育の為め羞恥心が先に立つて一般家庭婦人には店頭に立つて買うと云う事が出来ないのが多い.従つて共の必要性を充分感じ乍らも実行出来ずに居る家庭を見うけるのは少くない.之を先ず容易にする事を考えねばならない,又種々の器具や薬剤の中で,どの器具や薬剤が其の人に最も適しているかと云う事を誰れが決定するかと云う問題も又大切である.
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.