講座
受胎調節の指導と保健婦
石垣 純二
pp.23-26
発行日 1952年5月10日
Published Date 1952/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200277
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
厚生省の方針への私の疑問
昭和27年度に,厚生省は2千2百万円余の予算を計上して,受胎調節の普及にのり出すことになりました。それは実にけつこうなんですが,その内容について,私はどうしても腑におちない点があつて,心から賛意を表する気持になれないのです。そうした疑問から話をはじめることが,この問題の核心を取り出してみせる捷径だと信じまして,冐頭まず,この点にふれますと,
①イギリスの例をみても,アメリカの例をみても,受胎調節運動というものは,いつも民間運動の形ではじまり発表してきました。ということは子どもを産むという基本的人権の一大要素であることがらを,政府の力で,どうこうということが,いかにも似つかわしくない。どうしても下から盛り上る,民衆の自覚の上に立つた運動でなければ発展しない性質のものだということです。ところが厚生省の運動の助成でなく,役所自身が,との運動の中核になろうとしている。即ち保健所の優生結婚相談所を充実して(全国7百の保健所に一つずつ)行こうとしています。そして民間運動を育てることに構想を持つていないように感ぜられることは何としても不思議であります。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.