特集 ポリオ
ポリオ(小児麻痺)の疫学—わが国の現状を中心にして
宍戸 亮
1
1国立予防衛生研究所
pp.16-21
発行日 1960年12月10日
Published Date 1960/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202225
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まえがき
本年5月から北海道に発生したポリオの流行は,今までにない大流行を示し,10月初旬現在までに,患者(主として乳幼児)は1,800名以上,死者は90名を超え,今や一つの社会問題化しつつある.この原因について,防疫対策が不適当であったとか,ワクチンの供給ないし製造が不足であつたとか,当面いろいろな論議すべき多くの問題が存在するけれども,それにもまして私にはポリオという病気の疫学について,すべての人の認識が少し足りなかつたのではないかと思われる.将来,ポリオの予防を考えるのに何より大切なのは,ポリオという病気の疫学に対する防疫担当者をも含めて一般の人が深く認識するということであろう.
およそ一つの病気の疫学を考える場合,私は常常その病気についての三つの要素を分けて考え,それぞれを分析し,しかる後これを総合して一つの認識をもつことが大切であると主張しているものである.その三つの要素とは次のようなものである.
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