講座
兒童心理(5)—幼児期(その3)
小林 さえ子
1
1実踐女子大学
pp.14-19
発行日 1955年5月10日
Published Date 1955/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200946
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
§3知的発達(前号のつづき)
b)自己の中心性
子どもは出生の日の浅いほど,自分と自分以外のものとの区別がはつきりしません.このような性質を,「自他未分化性」といいます.新生児や乳児は,母親と強固な一体をなして生活しているため,子どもにとつて母親は特に「他」という感じがありません.実際,母親は授乳をはじめ,赤ちやんの要求を敏感に察してそれをみたします.また,家庭という環境では,幼児は力なき者として母親にかぎらず,全家庭から大切に保護されます.年の大きいきようだいと欲求が衝突すれば,より小さい者にゆずられることが多いのです.
大人達から,このような扱いをうける結果,子どもは外界の現象を自己本位に考え,自己本位に行動するようになります.スイスの学者ピアジエは,この傾向を「自己中心性」とよび,幼児心理の根本的特徴として指摘しました.氏は大人が子どもに対し実在の抵抗を保護することが自己中心性の原因であると主張します.
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.