論述
兒童福祉法について
港野 悟郎
1
1厚生省兒童局母子衞生課
pp.39-40
発行日 1948年5月25日
Published Date 1948/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200294
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終戰後の世相は且てわれわれの經驗しなかつたほどの社會的混亂と道義の頽廢を紹來した。これら混沌とした時世にあつて自ら世の荒波を乗切ることができず勞働力の尠い兒童或は精神的肉體的缺陥を有する弱者は,極度に生命をすら脅かされる生活苦に直面し,或はその他の者のために利用されて徐々に惡の道に沈濳しつゝある現状である。これらの弱者に對しては社會的關心を喚起し或は社會的保護を加えない限り何時の世に於ても放置され或は無用者として冷眼視され厄介者として顰蹙をかうのが普通であつた。これら弱者のうち殊に兒童は,生命の芽生えの過渡期にあるものであるから,その精神を素直に成育させ,肉體を健全に成長させるためには特別な保護が必要である。吾國に於てもこれらのものを世塵から護り,適切な發育環境を與えるために兒童關係には二つの法律があつた。即ち少年教護法(昭和8年5月5日法第55號)は14歳未満の少年にして不良行爲を爲し又は不良行爲を爲す虞のある者を未然に教護し又は教護院に收容して監護養育し,普通教育を施し獨立自營に必要な知識技能を授け其の資質の改善向上を圖ることを主旨としていた。兒童虐待防止法(昭和8年4月1日法第40號)は14歳未滿の兒童を,保護すべき責任にある者が兒童を虐待し又は著しく其の監護を怠つた場合の處分を規定し,兒童の輕業,曲馬,諸藝の演出,物品の販賣等を制限又は禁止している。
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