講座
結核予防と保健婦
井上 泰代
1
1結核研修所保健看護学部
pp.16-21
発行日 1955年4月10日
Published Date 1955/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200930
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
明治以来結核で死んだ人の数は人口1万に対し20前後でした.第2次世界大戦の昭和19年から21年にかけての統計が正確だと云えないとしても1万に対して20を超していたのは事実であります.それが終戦後は急に減つて来て昭和26年には結核死亡半減祝賀会を催し,皇后陛下も御臨席になりまして,今後益々結核予防に力を注ぐようにとの御旨令のあつた事は結核予防裏業に関心を持つ人人の記憶に残つている事でしよう.其後も結核による死亡数は益々減少の途を辿つています.この減少の原因は何処にあるかと云えば先ず集団検診に依つて凡ての結核を早期に発見する事,施設又は家庭内においての隔離の設置,治療面の急激な進歩,一般公衆衛生の教育,又は予防の処置の普及により感染予防が漸次徹底されて来た事,社会保障結核予防法等で社会経済的不安の除去に努力した事や後保護と社会復帰の問題等が多くの人々の関心事になつた事だと考えられます.上述した大まかな項目の1つ1つに大なり小なり関与しているのが保健婦であります.そうすると結核予防運動においては保健婦事業こそ最も広く社会に滲透きれたものと老えてもよいと思います.かくれてひと目に立たない苦難の多かつた保健婦の仕事も現在になつて結核の死亡が減少して来た,発病が少くなつたと云つた事が数字的に現れた時初めて私達保健婦のかくれた仕事の結果のお蔭だと自信をもつて云える事を私は喜びとしています.
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.