講座
喘息
日野 和德
1
1東大
pp.10-15
発行日 1955年4月10日
Published Date 1955/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200929
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1.喘息とはどんな病気か
せきや痰に伴つてのどがぜいぜいと音をたてると喘息ではないでしようかと尋ねられる.また実際幼い子供のこういう状態は小児喘息と診断されていることがよくある.老人が長い期間そういう症状を呈したり,冬になつてわるくなつたりすると「私は喘息もちでして」などと言うことがある.しかしそれらの多くは本当の喘息ではない.
喘息という言葉は医学的には発作的におこる呼吸困難を意味していて気管枝喘息・心臓性喘息・尿毒症性喘息等の種類があるが,一般に喘息としてよく知られているのは気管枝喘息のことであつて,主に老人の患者について医者がこれと区別しなければならないのが心臓性喘息である.気管枝性のものと心臓性のものとは共に夜間に発作的に呼吸困難がおこることが多い点やその病状は非常によく似ているが,心臓性喘息は平素から心筋障害や弁膜症などの心臓疾患や高血圧症のある患者に突然左心室の機能不全を生じた場合におこつてくる呼吸困難の発作であつて気管枝喘息と異り非常に危険な状熊で,肺水腫をおこして死亡することが多い.
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