講座
社會心理學の話(その1)
中野 卓
1
1教育大学
pp.37-44
発行日 1954年9月10日
Published Date 1954/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200802
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まえがき
社会心理学(Socil Psychology)は,社会学の一部だとも,心理学の一部だとも,その中間にある独立の一領域だともいわれる.社会学者には社会学の一部とする人が多いし「心理社会学」というような名でよぼうとする人まであったくらいだが,心理学者は,「やっぱりそれは心理学の一部だ」というようである.ここでは,べっだんそういう学問論をするつもりはない.というのは,この講座が,もっぱら実際的な場面にあたって読者の方々が「社会心理学的なものの見方」を身につけたいといわれる要望に答えるために開かれたものだからである.
いづれにせよ社会心理学は,社会学と心理学との密接な関係のもとに生れでた新しい学問の一領域であるが,べっだんこの兩者だけでなく,今日の社会心理学の大きな発達は,民族学,人類学,精神病学,教育学等々さまざまな「人間科学」(人間に関係した研究をする諸科学)の協力の歴史のなかから,その研究成果を合せ,批判し合いして,生みだしてきたものである.
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